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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 一行が町の入り口までやってきたのはそれから二時間後だった。 タバサは近くの岩場に腰を下ろし、本を読んでいた。先ほどの竜がまるでタバサに話しかけるようにして顔を寄せている。 「おまたせ、タバサ。」 キュルケが康一の馬から飛び降りた。 「遅れたけど紹介するわね。あたしの親友、タバサよ。」 本を読んだままのタバサの肩を抱き寄せた。 「こ、こんにちはー」 康一は馬から降りて声をかけてみたが、反応はない。 「無愛想な子ねー」 ルイズはあきれたように言った。 キュルケが康一にずっとくっついたまま離れなかったのでご機嫌ななめである。 「ちょっと無口なだけよ。それにルイズも無愛想さでは負けていないと思うわよ?」 キュルケが軽く受け流すと、ルイズがむっとして睨みつける。 空気が険悪になりそうだったので、ルイズが爆発する前に康一は話題を探した。 「え、えーっと、そういえばルイズは何を買うつもりだったの?」 「・・・あんたにいろいろ買ってあげなくちゃいけないじゃない。杖とか。」 「杖?」 メイジでもない自分に杖などいるのだろうか。 ルイズはコーイチの耳元に口を寄せた。 (あんたの『スタンド』。魔法だってことにしたら都合がいいでしょ?) 「ああ、そっかぁ!」 康一は納得した。 スタンドをおおっぴらに使えないおかげで、ギーシュとの決闘ではひどい目にあった康一である。 杖さえ持っていれば、『スタンド』も『東方式のちょっと変わった魔法』としてみて貰えるかもしれない。 「なに、どういうこと?ダーリンって魔法が使えるわけ?」 キュルケは理解できない様子である。タバサは黙ったまま何も言わない。 「(そっか。康一の『スタンド』のこと、知ってるのわたしだけなんだ。)」 秘密を共有しているようでなんだか嬉しい。 「(そうよ。キュルケが無駄に色気を振りまいたって、所詮は他人だわ。わたしはご主人様なんだもの!)」 自信を取り戻したルイズは、とたんに上機嫌になった。 「たいしたことじゃないわよ。ちょっとあんたにはいえないけど。」 なんて澄まして見せる余裕まである。 キュルケからすると、非常におもしろくない。 康一から聞き出そうとするも、言葉を濁されるから余計である。 ほら、さっさと行くわよ。背を向けるルイズに向かってつぶやいた。 「いいわ。いずれじっくり聞き出してあげるんだから!」 「へぇ!なんだかいろいろなものがおいてあるなぁ~!」 康一はきょろきょろと興味深そうに店の商品を覗き込んでいる。 露店に挟まれた通りは非常ににぎやかで、人でごった返している。 売っているものも、肉や野菜や服などといったよくみるものだけでなく、日本では到底見れないようなものも並んでいる。 ビン詰めの目玉なんかがあったりしたが、あんなの何に使うんだろう。 「ここはトリステインで一番の大通り、ブルドンネ街よ。」 ルイズは心持ち得意げに説明した。 「え?一番の大通り!?」 康一は驚いた。単に近くの街だと思っていたのだ。 「それにしては・・・ちょっと小さい気もするなぁ~」 意外と規模の小さい国なんだろうか。 「なにわけわかんないこと言ってんのよ。ほら『杖』の店はこっちよ!」 ルイズは康一の手を引いた。 「あ、ちょっと待って!あの路地の奥に、『剣』の絵が描かれた看板が見えるんだけど・・・」 康一は薄暗い路地を指差した。 「そうね。武器屋があるんでしょ。それがどうかしたの?」 「いやぁー!ちょっと感動っていうか・・・!」 ゲームでよくあるような武器屋の看板が実際にあるのだ。 うわぁ、やっぱりファンタジーな世界なんだなぁ!と康一はわくわくした。実際の武器屋ってどんな感じなんだろう。 「ちょっと見てくるね!」 康一が走り出すので、ルイズはあわてて追いかける。 「こらー!武器屋になんて行ってどうするのよー!」 「やっぱりダーリンも男の子なのねぇ。」 キュルケとタバサも後を追った。 「おーい、坊主。ここはおもちゃ屋じゃねぇぞ。」 武器屋の店主は、さきほど入ってきた小さな少年に声をかけた。 ちょうど客もおらず、暇だったから構わないのだが、あまりにも目をきらきらさせて店を見回しているので苦笑する。 「あ、ごめんなさい。ぼく、こういう店、初めてきたんですよねー!」 まぁ害もなさそうだから放っておくとしようか。金も持ってなさそうだし。 と、そこへ今度は貴族の小娘が入ってきた。 すかさず店主は腰を低くした。 「いらっしゃいませ貴族様!当店はまっとうな商売をしておりまさ!怪しいものなんてなにも・・・」 「別にこの店に用があるわけじゃないわ。」 もみ手をする店長に、ルイズは興味なさげに返した。 「ほら、コーイチ。行くわよ!」 ルイズが袖を引っ張るが、康一は「もうちょっとだけ!」と壁にかけられている武器にかじりついている。 「(へぇ、ひょっとしてこの坊主は貴族の従者かなにかか。ってことはカモがネギしょってきたのかもしれん。)」 店主はにっこりと笑った。 「なんならお似合いのを見繕いましょうか?」 康一は嬉しそうに振り向いたが、残念そうに首を横に振った。 「ごめんなさい。ぼくって、お金もってないんですよね。」 店主は貴族の小娘を見たが、買い与える気など毛頭なさそうである。 そこに今度は、まぶしいほどの色気がある赤毛の美女と、青髪の娘が入ってきた。こちらも貴族らしい。 「あたしが買ってあげてもよくてよ?」 キュルケが康一に声をかけた。 しかしルイズが立ちはだかる。 「わたしの使い魔に変なものあたえないでよ!それに剣なんか買ってもしょうがないじゃない!」 「いいでしょ。あたしが何を買おうと勝手だし、コーイチが何を貰うのも勝手だわ。」 あのー、と康一が声をかけた。 「剣って杖の代わりにならないの?」 杖はただの棒じゃないから、代わりにはならないけれど・・・とキュルケはあごに人差し指をあてた。 「でも、魔法衛視隊なんかは、大体レイピア形の杖を持ってるわね。それに、傭兵をやってるメイジで、杖の機能を持たせた武器を使ってることはあるらしいわ。」 康一は財布を握っているルイズを見た。 「どうせ買うならそういうのがいいかなぁ~。って思うんだけど・・・高くなるのかな。」 店主がすかさず割り込んだ。 「いえいえ!当店は平民用の武器だけでなく、メイジ様にもぴったりな武器も多数取り揃えておりますですよ!傭兵のお客向きの商品などは、貴族様が使う杖などよりお安くできまさ!」 意地があるので決して口にはしないが、実は康一の治療費やらなにやらで、少し懐が心もとないルイズである。 自分が知っている店は貴族用の高級な店で、かなりの出費を覚悟していただけにその言葉には少し惹かれた。 「ま、まぁコーイチがそんなに欲しいなら、考えないでもないわ。」 ルイズが同意して見せると、店主は「では少々お待ちください!」と奥に引っ込んだ。 あの貴族の小娘たちと従者。関係は良くわからないが、雰囲気は貧乏貴族ではない。 おそらくかなりの金を持っているはず、と店主は睨んだ。 笑顔で一本の長剣を抱えていく。 「こちらなどはどうでしょう。かの高名なシュペー卿の鍛えし大業物!ちょっとお値段は張りますが、鉄を紙のように切り裂くって触れ込みでさぁ!もちろん、お望みのように杖の代わりとしても使えますぜ!」 宝石や金の装飾の散りばめられたいかにもな宝剣である。 「・・・ちなみにそれ、いくらなの?」 「そうですねぇ。本当はエキュー金貨で2500はいただきたいところですが・・・今回は、2000エキュー。新金貨なら2500で結構でさ!」 「2000!?ちょっとした家屋敷が買える値段じゃない!」 「いいものは値が張るものですぜ?命を懸けるものですからねぇ。」 店主がもっともな顔をして言う。 ルイズは顔をしかめた。 「・・・もっと安いのはないわけ?100くらいの。」 「まともな剣を買おうと思えば、少なくとも新金貨で200はしますがね。まぁそこにあるのは一律200ってものでさ。」 店主は店の隅で剣が無造作に束ねられている一角を指差した。 「しかし、貴族様の従者に持たせるには、あのあたりの凡庸なのは少々物足りないと思いますがねぇ。」 すると、突然、ガチャガチャという音とともに声が聞こえてきた。 「誰が凡庸だ、このスットコドッコイの詐欺親父!!このデルフリンガー様をそこらの剣と一緒にするんじゃねーよ!」 一行は驚いて声のするほうを見つめた。 「だいたい、そんなコゾーに持たせるならおしゃぶりのほうがお似合いだぜっ!」 「こ、こらデル公!お前はだまってろ!」 一本の錆びた長剣がカチャカチャと鍔を鳴らしているので、タバサがするりと引き抜いた。 「こら!小娘!勝手に触ってんじゃねぇよ!」 タバサはそんな剣の罵声に耳を貸さず、しばらく見つめてから康一に手渡した。 「インテリジェントソード」 「ま、まさかこの剣がしゃべってるのかぁ~!?」 康一は手に持ってしげしげと剣を眺めた。でもスピーカーはついてないしなぁ。 すると、それまで騒いでいた剣が、突然黙り込んだ。 「・・・おでれーた。おめぇ『使い手』か。」 「『使い手』ってなに?」 当然ながら今まで剣など触った事もない康一である。 「俺の柄を握ってみろ。」 言われるがままに、両手で柄を握ってみる。 すると、康一の左手のルーンが青白く光を放ち始めた。 キュルケが叫んだ。 「だ、ダーリン!手のルーンが光ってるわよ!?」 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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ここは・・・?学院のわたしの部屋。 「忠誠には、報いるところがなければなりません。」 部屋の中央で姫さまがプロシュートに左手を差し出していた。 姫さま?なんで? 「お手を許す・・・そんな事は出来ないさ!ただし、お前がだ・・・ 『アンリエッタ』」 プロシュートは、そう言い終わると姫さまの左手を両手で握り締めた。 「グレイトフル・デッド!」 「きゃああああぁ」 「きゃああああぁ」 わたしはベッドから勢いよく身を起こした。 学院の寮じゃない、宿の部屋だ。 夢か・・・、姫さまが・・・姫さまが。 落ち着け、落ち着けルイズ。プロシュートは姫さまにキスしたじゃない。 あんな事してないわ。 わたしは部屋を見渡すとワルドはもう居なかった。 テーブルの上に一枚の手紙が置いてあった。 『錬兵場で待つ ワルド』 何かしら、わたしは身支度を素早く済ませると錬兵場に向かった。 わたしが錬兵場に着くとワルドとプロシュートが立っていた。 「ワルド、来いって言うから来てみれば、何をする気なの?」 「彼の実力を試したくなってね」 魔法衛士隊の隊長とプロシュートが戦う・・・ただで済むはずが無い! 「もう、そんなバカな事はやめて。今は、そんな事してる時じゃないでしょう?」 「そうだね。でも、貴族というヤツは厄介でね。強いか弱いか、 それが気になるともう、どうにもなららくなるのさ」 そんなこと、気にしなくて良いじゃない。わたしはプロシュートに話し掛けた。 「やめなさい。これは、命令よ」 「ああ、そうだな」 プロシュートは立ち去ろうと背を向けた。 「今、なんといった?」 ワルドがギロリと睨むとプロシュートがチラリと顔だけ振り返り答えた。 「断ると言ったんだ」 プロシュートは、わたし達を残し一人で去っていった。 「臆したか、あの男は?」 ワルドは呟くが、それはないわね。 まったく、敵の襲撃より仲間同士のいざこざの方が気になるなんて、 思ってもみなかったわ。 その夜、一階の酒場でギーシュたちは酒を飲んで騒ぎまくっている。 その場にプロシュートは居なかった。部屋に残ってるのかしら? 部屋を訪ねるとプロシュートはベランダで月を眺めていた。 「プロシュート」 わたしが声を掛けるとプロシュートが振り向いた。 「なんだ?」 「よく断ったわね、てっきり受けるとばかり思っていたわ」 わたしは、思い切って言ってみた。 「お前がヤメロッつったんだろーが」 「それはそうなんだけど」 プロシュートが手合わせを断るなんて思わなかった。 「まっ、命を懸けずに戦うなんて無意味だからな」 「無意味なの?」 プロシュートの戦いに対する考え方に思わず聞き返した。 「ああ、そうだ。本当の強さってのは、追い詰められ命を懸けた時に 初めて発揮されるもんだぜ」 本当の強さか・・・。 「うお!」 プロシュートが叫んだ。視線を追うと岩でできた巨大な ゴーレムが立っていた。 巨大ゴーレムの肩に誰かが立っている。その人物は長い髪を、風に たなびかせていた。 「フーケ!」 わたしたちは同時に怒鳴った。 「プ、プロシュート!ど、どうしてココに?」 フーケが震えながら叫んだ。 「そりゃこっちの台詞だぜフーケ。 オメー、ムショにぶち込まれてたんじゃねえのか?」 プロシュートはフーケを鋭く睨んだ。 「はい。そ、それはですね、こちらの方が革命に一人でもメイジがいると 仰いまして、わたしが今ココにいるわけです。はい」 フーケが体を横にずらすと暗くてよく見えなかったが白い仮面をつけた 黒マントのメイジが立っていた。 プロシュートが質問を続ける。 「俺達を襲ってきた傭兵は貴族に雇われたと言っていたな、その貴族は お前だったのか?」 「え?えっ?あっ!」 あのトライアングルのフーケが小動物の様に怯えている。 「つまり、お前は敵っつーワケだな」 「違います!」 フーケは力の限り叫んだ。 「違います、違います、何も知らなかったんですぅ」 ここから見ても分かるほどの見事なうろたえっぷりだ。 「・・・・・・・」 仮面の男がフーケに話し掛けるが何を言っているのか聞こえなかった。 フーケが男に言い返す。 「裏切る?革命にも参加しよう、エルフにも喧嘩を売ってやるさ。」 エルフですって!?貴族派は何をしようっていうの? 「だけど・・・だけど、その男だけは別なのよー」 「・・・・・・」 「何も無いわ!私は絶対にあの男には勝てない!」 プロシュートと二度と戦いたくない。その気持ち、嫌というほど良く分かるわ。 二人の揉め事を見ながら、プロシュートが話しかけてきた。 「ルイズ、ヤツ等から話を聞くか?傭兵より詳しく話を聞けそうだ」 その瞬間、フーケが言い争いをピタリと止め此方に叫んだ。 「知りません!何にも知らないんです!本当なんです!私が知っている事は、 今ここの一階を雇った傭兵で襲うことだけなんです!」 何ですって、みんなが危ない。 「プロシュート、下に行くわよ」 「ああ」 わたし達は部屋を出て、階段を駆け下りた。 宿の一階は修羅場だった。ギーシュ、キュルケ、タバサにワルドが 魔法で応戦しているが、数の差で傭兵が圧倒している。 「状況は?」 プロシュートは近くにいたタバサに尋ねる。 「外、傭兵たくさん」 タバサが簡潔に答える、その後をキュルケが引き継ぐ。 「奴等は魔法の射程外から矢を射かけてきているわ。こちらに魔法を 使わせて精神力が切れたところを見計らい、一斉に突撃してくるわよ。 そしたらどうするの?」 プロシュートの後ろに薄っすらとした人型が・・・グレイトフル・デッド! 「なるほど『射程距離』か、オレなら余裕だな」 「ダーリン?」「兄貴?」 「オレの能力を無差別に使い、ヤツ等を無力化した後、皆殺しにしてココを 突破する!」 男も女も赤ん坊でさえも老いる、身の毛がよだつ光景が思い出される。 うろたえるなルイズ、自分の使い魔に怯えるメイジなんていない。 「ちょっとまってダーリン。今、無差別って言った?」 抜け目の無いキュルケが気づいたようね。 「ああ」 「それって・・・ゴクリ・・・わたし達も、て事?」 「そうだ、すぐに済ます。我慢しろ」 「お願いダーリンそれだけは止めて!それだけは!」 キュルケは一瞬で想像したのだろう、フーケの様に老いる自分の姿を。 「放せ!纏わりつくな」 何時も余裕の態度を崩さないキュルケの取り乱しようをみると、 なんだか凄く気分が良いわ。わたしってちょっと嫌な奴かも・・・ いやいや、相手はあのツェルプトーだから良しとしよう。 「わたし達、わたし達でなんとかするからそれだけは」 「よし!それでいこう」 ワルドは低いが響く声で言った。 「いいか諸君。このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ、 成功とされる」 タバサが本を閉じ、ワルドの方を向いた。自分とキュルケと、ギーシュを 杖で指して「囮」と呟いた。 それからタバサは、わたしとワルドとプロシュートを指して「桟橋へ」と呟いた。 「時間は?」ワルドがタバサに尋ねた。 「今すぐ」と、タバサは呟いた。 「聞いてのとおりだ。裏口に回るぞ」 言い終えるとワルドは裏口に向かった。 「え?え?ええ!」 「今からここで彼女たちが敵をひきつける。せいぜい派手に暴れて、 目だってもらう。その隙に、僕らは裏口から出て桟橋に向かう。以上だ」 「で、でも・・・」 わたしはキュルケたちを見た。キュルケが赤髪をかきあげ言った。 「ま、仕方ないかなって。あたしたち、あなたたちが何しにアルビオンに 行くのかすら知らないもんね」 ギーシュは薔薇の造花を確かめ始めた。 「うむむ、ここで死ぬのかな。どうなのかな。死んだら、姫殿下と モンモランシーには会えなくなってしまうな・・・」 タバサはプロシュートに向かって頷いた。 「行って」 「わかった、いくぞルイズ!」 「ちょ、待ってよ」 酒場から厨房に出て、わたしたちが通用口にたどり着くと、酒場の方から派手 な爆発音が聞こえてきた。その後もっと大きなフーケの怒鳴り声が聞こえてきた。 「誰がおばあちゃんだ!小娘が!泣かす!殺す!いわす!」
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迷い人とリンゴ ミーティングルームにてウィッチたちは集められた。 尚、ミーナがオレは別の世界から来た人間という事を説明した。 オレ「というわけで、この部隊で働く事になったオレだ。よろしくなー。」 手をヒラヒラさせて、軽く挨拶する。 他の者たちは驚き戸惑いを隠せなかった。 ペリーヌ「この泥棒と仲良くするなんて冗談ではありませんわ!!」 エイラ「サーニャに手を出したら許さないからナー。」 サーニャ「・・・・・・。」 予想はしていたが、言われると腹が立つな。 言い返そうとした時、ミーナが説明する。 ミーナ「オレさんは、ウィッチという結果が出ましたので私達の部隊に入隊する事になりました。」 シャーリー「へぇー、男性なのにか?」 ルッキーニ「すっごーい!!」 エーリカ「ふーん、それは面白いね。」 坂本「リーネ、宮藤。」 リーネ・宮藤「「はい!!」」 坂本「オレの基地案内を頼む。オレはあの二人について行くんだぞ。」 ――――――――――――――――――――――――基地内 ~風呂場~ リーネ「ここが、お風呂場です。」 オレ「へぇー。」 宮藤「私達がお風呂に入る時間帯は後で教えて置きますね。」 オレ「ああっ・・・。」 ~食堂~。 リーネ「ここが食堂です。」 オレ「腹が減って、リンゴを盗んだからな。ここは知っている・・・。」 宮藤「あはははっ・・・」 ~ハンガー場~ リーネ「ここが、私達のストライカーユニットを整備しているハンガーです。」 オレ「ここが、ねぇ・・・。」 宮藤「後、シャーリーさんルッキーニちゃんがよくここにいる事があります。」 オレ「シャーリーがオレンジ色の髪で、ルッキーニはツインテールで肌が褐色の子だよな。」 リーネ「ええっ。そんな感じです。」 オレ「だいたいは、見回ったな・・・後は、使い魔でも探してみるわ。」 宮藤「一人で大丈夫なんですか?」 オレ「大丈夫だ、問題ねぇ。」 手をヒラヒラさせてハンガーから去り、使い魔を探しに森林へ向かう ――――――――――――――――――――――――森林 オレ「なんの使い魔にしようかね。」 森を探索するオレ。 だけど、犬や猫が全然、見つからない。 オレ「参ったな・・・。」 使い魔が見つからず困っている。 オレの背後から何かが近づいてくる。 勿論、オレは気づいていない。 音も無く忍び寄る何か。 オレはようやく気付いて背後を見ると・・・一匹の大蛇がいた。 オレ「なんだ・・・どうしたんだ?」 手をクイクイッとすると大蛇はオレの手に昇る。 噛みついてくる様子は無い。どうやら、人になれている蛇の様だ。 よく見ると結構傷だらけである。相当な戦を潜りぬけた様子が解る。 オレ「・・・まぁ、蛇を使い魔にするのも悪くないかもな。なーんて。」 そう言うと、大蛇はニョロニョロとオレの後ろに回り、鎌首をしてポンッと尻に当てた。 オレ「・・・マジか?」 眩い光に包まれた。 閃光が晴れるとオレの腰から蛇の尻尾が出ていた。 オレ「ふーん・・・なんか、カッコいいねぇ。」 ――――――――――――――――――――――――翌日・滑走路 坂本「よーし、これから、訓練を行う!!」 宮藤・リーネ・ペリーヌ「「「はいっ!!」」」 元気に返事を返す3人の少女。肝心のオレはというと・・・。 オレ「・・・めんどくせぇ。」 物凄くやる気のない顔だ。 坂本は顔色を変えずに、オレに言う。 坂本「鍛錬を怠れば、死に直面するぞ。」 オレ「・・・そいつは困るな。やるとしますかね。」 ダルそうに立ち上がり、背を伸ばしコキコキと肩を鳴らす 坂本「態度は悪いが、やる気があれば十分だ。まずはランニング基地10周走って来い!!」 スタコラッと基地を十周走る事になった。 ~訓練なので省略~ オレ「・・・しんどい・・・。」 ペリーヌ「情けないですわね・・・。」 坂本「休んでいないで、次は筋トレだ。」 オレ「うへぇー・・・」 ~訓練なので(以下略)~ 坂本「訓練終了!!」 オレ「・・・あんの眼帯女。キツイ訓練ばかりやらせやがって。」 大の字に寝っ転がって疲れながらも憎まれ口は言う。 宮藤「あははは・・・・。」 リーネ「お、お疲れ様です・・・。」 オレ「・・・よっと、あら?」 立ち上がった途端、景色がグニャリと曲がり倒れてしまった。 ――――――――――――――――――――――――医務室 オレ「・・・・ハッ!!」 宮藤「あ、気が付きました?立ち上がった途端、倒れたんですよ。」 オレ「・・・情けないな。」 リーネ「・・・あの、オレさんって別の世界から来たんですよね?」 オレ「んっ・・・、そうだけど?」 宮藤「だったら、家族とか待って「いねぇよ、家族なんて」・・・えっ?」 オレ「事故で死んじまったよ。俺を残して・・・。 俺は半分、自暴自棄になって喧嘩に明け暮れて、 最後は両親と同じように・・・車に轢かれて死んだかと思ったさ。」 リーネ「そう、だったんですか・・・。ごめんなさい。」 オレ「謝る必要はねぇーよ。 話の続きだが、車に轢かれそうになったガキを助けたんだよ。 どういう理由かは知らないけど、こうして俺は生きてんだ。 少しだけは神様に感謝しているさ・・・。」 皮肉に言って笑う。二人はなんか、悲しく申し訳ない顔をしていた。 オレ「んな、顔するなって・・・。」 宮藤「オレさん。」 オレ「あー・・・そのよう、女は泣いてると幸せが逃げるぜ。」 リーネ「は、はい・・・すみません。」 オレ「少し横になるわ。もう、大丈夫だからさ。」 宮藤「はい、お大事に。何かあったら呼んでくださいね。」 二人は医務室から出て行く。 一人残されたオレはフゥーとため息をつく。 オレ「・・・なんで、あんな事を話したんだろうかな。俺は・・・。」 昔の俺だったら、突き離す様な言葉を言うか無視するかだったのに・・・。 なんで、こんな事を言うのか。 それが何なのか、今の俺には理解できなかった。 護りたいモノへGOー
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ガシャン ゴロゴロゴロゴロ ドン ガチャ ゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・ ここに一つの奇妙なゲームが繰り広げられていた。 鬼は石ころ、逃げるは少女。捕まれば即死のデスゲーム、 少女、ルイズは必死に岩から逃げていた。 「ハァ・・・なんで・・・私がこんなめに・・・!」 もうルイズに自分の使い魔に対する情など完全に消えうせた。 彼女を薄情と責めるのは酷であろう。 明確に死を運んでくる死神に、誰が愛着をもてようか。 ダンダンダンダンダン ルイズは階段を駆け上がる ガンガンガンゴンガン ローリングストーンも階段を駆け上がる。 この岩は坂に登ろうと階段を上ろうと執拗にルイズを追いかけてきた。 「もお・・・・・・・・いやあああああああああああああ!!!!」 ストーンとの追いかけっこが始まってはや30分。 もうルイズの体力は限界に来ていた。ここまで逃げてこれたのは一重に彼女魔法を使えなかったことの賜物だろう。 もしちょっとの移動にも魔法を使うようなマンモーニならとっくの昔に石につぶされていたことだろう。 無論魔法を使えばもっと安全に逃げれたかもしれない。しかし・・・ バン! ルイズは近くの小屋に逃げ込んだ。 「ハァ・・・ヒィ・・・スーーー、ハーーーー」 ルイズは大きく深呼吸し少しでも呼吸を整えようと努力する。 少しでも足を止めれるときに体力を回復せねば・・・ ゴロリ 「ハァ・・・もう・・・なの・・・うわああああああああああああああん」 バン! 入ってきた時と同じくドアを乱暴に蹴飛ばし再びルイズは逃げる。 そこから同じく転がって出てくるローリングストーン。 岩は仮に撒いたとしてもいつの間にかルイズの側に現れるのだ。 「あんたはハイウェイスターかぁあああああああああああ」 ルイズは半ばやけくそ気味に絶叫した。 彼女自身ただ逃げてるだけではダメだと思ってはいるものの、脳にまわすエネルギーも全部筋力に回さねば逃げ切れない。 そして、運命の時が来た。 ドサッ ルイズの足がもつれて転ぶ。 「あう、あ、あ・・・」 必死に立ち上がろうとするが限界を超えた足腰はもう動かない。ただケタケタと笑うだけ。 ゴロン ゴロン ゴロン ブォッ そしてついにストーンがルイズに追いつく。 「ちくしょう・・・絶対化けて出てやる・・・このド低脳がああああ!」 ルイズが死を覚悟したその瞬間 ブウン! 突如現れた爪にルイズの華奢な体は攫われる。 「貴族がそんな下品な吐くことでなくてよ、ルイズ」 「キュルケ! それに・・・えっと」 「・・・・・・タバサ」 名前を忘れられてた少女・・・タバサはちょっと不機嫌になりつつもルイズをシルフィードの背中に。 「どうしてあんたが・・・ゲルマニアに帰ったんじゃないの?」 「んー、そのつもりだったんだけどね、タバサに送ってもらうつもりだったし。 まー最後にあんたのマヌケ面見ようと探してたらえらい場面に出くわしちゃったみたいね」 「・・・! そうよ、お願いさっきの礼拝堂に」 「・・・・・・捕まって」 タバサが言うが早いがシルフィードが空中でバレルロールをかます。 その横を ブオン! 大地から飛び上がったストーンが彼女たちの鼻先を掠めて落ちていく。 「岩の癖になんて跳躍力・・・まるでどこかの波紋使いね。タバサ低空飛行に切り替えて。そっちのほうが安全だわ」 キュルケの指示通りタバサは低空飛行に切り替える。 地上3メートルを猛スピードで駆け抜けるドラゴン。そこに、 「見つけたぞ、ルイズ! 昨日はよくもやってくれたな」 そこには昨日岩に脳天勝ち割られたギーシュが怒りの形相で立っていた。 「あの岩は君の使い魔だそうじゃないか。だったらこの傷の借りを返さねばなるまいね。 ああ勿論僕も馬鹿じゃない。岩に喧嘩売ろうなんて真似はしないさ。 しかしその主人たる君には責任を取ってもらおうか!」 いや、君は大馬鹿だ。と言うか空気読め。無理か。ギーシュだからか。ギーシュだしな。 「タバサ!」 ガシ 言うが早いがタバサはシルフィードを使いギーシュを掴み、 「あるぇ?」 そのままを一回転してギーシュをローリングストーンに向けてぶん投げる! 「あひょぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~!!!!!」 某ウィリソンフィリップ上院議員のように飛んでいくギーシュ。 ゴシカァン! そのままローリングストーンに体当たり?をぶちかますギーシュ。 ベキゴキバキボリガキベシャ しかしストーンは意に介さずそのまま激突してきたギーシュを押しつぶす! ギーシュは全身の骨をばらばらにされた しかしギーシュの『運命』は岩に彫られてないため死ねず・・・ そのうちギーシュは考えることをやめた。 「よかったの?あれ」 「大丈夫よ、ギャグキャラは死なないから」 「そういう問題・・・?」 「いいからあんたは自分の心配なさい。いい、作戦は今いった通りよ」 「分かったわ・・・でもキュルケなんでここまでしてくれるの? 私とあんたは・・・」 宿敵同士じゃない、と言おうとしたルイズの言葉をさえぎりキュルケは言った。 「ツェルプストー家は代々ヴァリエール家の恋人を奪い取るのがその宿命よ。 あたしの代だけ死に逃げなんて許さないわよ、ルイズ」 「言ってなさい万年発情女」 「・・・・・・ついた」 彼女たちはシルフィードにのってそのまま『火の塔』最上階にたどり着いた。 ガランゴン! ガランラン! 階下から何かが石の階段を壊しながら近づいてくる。 「いい、チャンスは一回こっきり、練習なしよ。失敗だったらそうね・・・お墓は作ったげるわ。 墓石もちょうどあるし。」 「縁起の悪いこと言わないでよ」 「あっはっは、冗談よ冗談」 いつも通りの軽口を叩くキュルケにルイズは感謝した。 ただ逃げ回ってたさっきまでとは違う。私は運命に立ち向かうのだ。 その結果が如何なるものであったとしても・・・『立ち向かう意思』を持てた。 その誇りこそが貴族には重要なのだ。 「もっとも・・・誇りを抱いて死ぬつもりもないけどね」 ガン! ガン! ガンガン! 岩の気配がどんどん近づいてくる。そして ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 再びローリングストーンは彼女たちの前に姿を現した。 「今よ!」 キュルケは瞬時の詠唱していた魔法を開放する。 火の二乗。強大な爆炎がローリングストーンを包み込み爆発する! ドォン! すさまじい爆音と爆風が辺りを包む。 「・・・・・・・・・」 誰も言葉を発しない。わかっているからだ。こんなもので ゴ…・・・ゴ あいつを倒せるわけがない! ゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・ブオン! ローリングストーンは多少のヒビを体にいれながらもなおルイズへの突進をやめない。 そしてついにストーンがルイズを捕らえんとしたその時! ガラ・・・ガラ・・・・ガラガラガラガラ キュルケの爆炎で塔の一部が崩れ落ちる。 塔の一部と一緒にルイズとローリングストーンも落ちていく。 このままいけばルイズはローリングストーンに殺されるまもなく地面に叩きつけられて死ぬだろう。 しかし、ルイズの目に絶望の色はなく、むしろその口元には笑みすら浮かんでいた。 そうここまではすべて計画通り。あとは彼女が運命を出し抜けるか・・・ 「かかったなアホが!」 彼女は落ちながらそう叫んだ。
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鏡の世界は左右対称で、生き物は『許可』しないかぎり一匹たりとも存在しないが、それ以外は非常に忠実に外の世界を再現する。 爆発音についでルイズの声(なんか怒ったような調子で俺を呼んでいた)、少なからず危険を感じたオレは とりあえず鏡の中から『外』の様子を推測してみる事にした。(ビビってるんじゃない、慎重なんだ。) 生き物(主に人間だな)が映らなくとも、その気配を探るのは割りと簡単な事だ。 人が歩く時、そいつが特に気を使わなければ、荷物は空中を移動し、絨毯は撓み、ドアはひとりでに開く。 (鏡の世界になれていない奴が見ると、相当に気持ちの悪い光景だ) もっと注意してみれば埃の舞い上がる様子だとか。どれぐらいの人数がどちらへ移動するか、大体ならばわかるのだ。 無残に吹っ飛ばされたドアから、大人数が出て行く感じがある。 ふうん、授業だとか言ってたかな、あのハゲ。ここは学校なのだろうか。 慎重に『教室』と思われる部屋を覗き込む。確かに大学なんかの講義室に似ている・・・・が、 机や椅子は派手に吹っ飛び、窓ガラスは割れ、酷い有様だ。やはり爆発か? 爆発だとしたら、鏡の中でも危険だな。 『物体』はこちらの世界でも変わらず動く。 ラリッた野郎がナイフを振り回したり銃を乱射したりすれば、それらは俺に当たるんだ。 勿論半端なモンならマン・イン・ザ・ミラーで叩き落とせる。パワーは無いが、鏡の中はコイツの世界だ。 オレはどんなに頑張ったってティッシュボックス一つ動かせはしない。が、 正反対に『マン・イン・ザ・ミラー』は、全てを動かす権利を持っている。 (『許可』して引き込んだものはその限りじゃあないんだが。『鏡に映ったもの』だけが、マン・イン・ザ・ミラーの自由になる。) だが爆発ってのは突然だし、思いもしないもんがスッ飛んで来るじゃあないか。 咄嗟に破片を防いでも、衝撃で後ろから本棚なんか倒れてきたら笑えもしないし 大体弾が出るモノは銃の形をしているが、爆発するものは爆弾の形をしていない方が多いだろ。心構えが出来ない。 『マン・イン・ザ・ミラー』はそんなに素早い動きは出来ないからな・・・・ 『熱風』なんかが無い分やっぱり『こっちの世界』の方が安全なんだが、それでも危険なのに間違いは無かった。 恐る恐る周囲の状況を探る・・・・オレを守れよ、『マン・イン・ザ・ミラー』・・・・何が爆発したんだ・・・・? 「おっと。」 足元で何かが動く・・・・塵取り?塵取りと箒だ。無駄の多い動きでガラス片を集めている。 ――――『罰掃除ですか?そんな・・・・』 『こっち側』へ引っ込む前に聞いた言葉を思い出す。 という事は、ここにルイズが居るって事か?掃除を? (罰掃除・・・・って事は、この爆発はルイズのせいなのか。) それなら原因なんか探す必要も無い。爆発物は『ルイズ』だ!『ルイズのスタンド』だッ! スタンド使いを前にして大切な事は、『よく考える事』だ。 スタンドって言うのは考えれば考えるほど色んな事が出来て、色んな事が出来ない。 自分は何をすべきか、相手は何が出来るのか、考える事が『大切』―――― ルイズのスタンドは(『なんとか・サーヴァント』ってやつ)動物を連れてくるって言っていたな。 爆発なんて、言っていなかった。隠していたのだろうか? 昨日の会話を思い出し、推測し、結論を出すべきだ・・・・『爆発する』『それを隠していた』事を踏まえて・・・・ ――――あたしは猫とか梟とか、出来たらドラゴンとかが良かったの! 動物を呼び出してどうするんだ?大体何に使うんだ 動物のがマシよッ!アンタみたいに口答えしないでしょ ――――『サモン・サーヴァント』は召還するだけで、帰すなんて出来ないわ ――――それに出来たってね、帰しやしないわ。あんたは私の使い魔だもの。あたしの―――― あ、あたしの・・・・何だって・・・・これは、これはッ! 恐ろしい仮説が成り立つッ!『サモン・サーヴァント』・・・・不自然な所の!説明がつくッ! 『それに出来たってね、帰しやしないわ・・・・あんたはあたしの――――爆弾だもの。』 こ、こういうことじゃあ、ないのかッ?! 『何処かから生き物を呼び出し、そいつを爆弾に変える』もしくは『爆弾を取り付ける』・・・・凶悪な能力だ。 呼び出された動物が勝手にうろつくのを利用して、離れたところでドカン!か? 『動物がいい』のは『口答えしないから』。確かに人間だと面倒くさい。説明が無いのもうなづける。 こんにちは、イルーゾォ。早速だけどあなた、もうじき爆発するから――――なんて言われたら、俺はすぐさまあいつを殺すだろう。 だとすれば、どうする?オレはもうルイズのスタンド攻撃を受けている!『まだ爆発していない』ことは確かだが・・・・いつだ? 『爆弾をとりつける』ってんなら、オレはもう安心だ。『マン・イン・ザ・ミラー』はオレしか許可しなかった・・・・ 知らず知らずのうちに取り付けられた『爆弾のスタンド』は、鏡の外に置き去りにされたはずだ。 だが、もうひとつ可能性がある。『オレ自身が、爆弾になっている』、十分にありうる!(スタンド能力ってのは、理屈なんかお構いなしだからな。) 鏡を通り抜ける時、違和感が無かった。無い、『それこそ違和感』だッ。後者のほうが、後者のほうが可能性が高いんじゃあないか? その場合、ヤバい。物凄くヤバい。いつ爆発するかさっぱりわからないぞ・・・・どうする?オレは?何かきっかけがある筈だ・・・・ (怖がってる時間は無い!冷静に考えるんだ、イルーゾォ・・・・おまえは暗殺者だ!) そうだ、さっきルイズの奴。なんて言った? イルーゾォは何処なのよ、だ。居なくなったオレの事を気にしていた。そりゃあ爆弾なんだから、危険なものだから気にはするだろう。 だが、その危険なものがさっき、ルイズの近くで爆発していた! でかい爆発なら本体も危険。遠距離がいい。『爆弾の動物』を遠くまで歩かせて、爆発させるのが。それが何故だ? 無理矢理になるが・・・・一つ可能性をあげるならば、『爆発は近くでしか起きない』だ。 勿論そんなのはおかしい。近くで物が爆発するスタンドなんて危険で仕方ないからな。 しかしそこで、『イルーゾォは何処』、だ。仮に『近くで爆発する』なら、近くに居ないオレの事を気にする必要があるか? そう、そうだ・・・爆発は『近く』じゃない、『見えるところ』で起こる! ルイズが視認する限りッ!ルイズが、『爆弾に変えた生き物』は『爆発させることが出来る』!! こ、これで間違いないはずだ、『サモン・サーヴァント』の能力・・・・仮説は間違ってないはずだッ (注:根本から間違っています) う、うあああああああ・・・・『ルイズにサモン・サーヴァントについて聞こう』だなんて・・・・俺は恐ろしい事を考えていた。 そんなもん聞いたら十中八九、消し飛ばされる!危ない、危ないところだったぞ・・・・ しかし、逆に考えると、俺の『マン・イン・ザ・ミラー』の能力ならルイズから隠れきる事が出来る。 ありがとう、『マン・イン・ザ・ミラー』。お前のお陰でオレは大丈夫だ! しかしそんな危険なスタンド使いの『爆発』にビビらず、しかも『罰掃除』なんか言いつける奴が居るって事は、 どうやらこの学校、スタンド使いだらけらしい。(なんて事だ!) スタンド使いだらけのギャング組織だってあるし、スタンド使いだらけの学校があっても不思議じゃあないな。 って事は勿論、幹部に当たる『教師』も、ボスの『校長』も、まとめて殆どスタンド使いで、ルイズよりも『格上』・・・・ッ! 畜生!どうすればいい・・・・味方は居るのか?オレは、オレはどうやって帰ったらいいんだ! 唯一つ確かなのは、『鏡の中は安全』・・・・それだけ! オレは『此処からでちゃあならない』!めったな事が無い限りッ!
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格闘ゲームの面白さってなに?キャラクターを思い通りに動かす楽しさ 読み合いの面白さ ゲームを通じて他のプレイヤーと交流する楽しさ 格闘ゲームの面白さってなに? キャラクターを思い通りに動かす楽しさ キャラクター固有のアクション、動きを思い通りに出し、画面を飛び回る爽快感。ラグナであれば、「ダッシュから相手の攻撃を5Bで潰すorダッシュからジャンプで牽制を飛び越えながら攻撃する」のような、相手の思考・動きを読んで、自分の操作で潰す、という読み合いをする面白さ。 ハザマであれば、「相手をドライブ牽制で簡単に近寄らせず、相手に寄られたら派生移動で反対側に逃げる」というような、縦横無尽な動きで相手を撹乱する面白さ。 読み合いの面白さ 『対戦ゲーム』なので、乱入してきた相手と「血の通った読み合い」を楽しめる。しかし、読み合いの構造を理解できていない場合、「何が悪かったのかが理解できない・勝てないので、楽しさを感じられない」というのもある。その点は駆け引きをお読みになってから、改めてリベンジを誓いましょう。 ゲームを通じて他のプレイヤーと交流する楽しさ ゲーム全般に言えますが、同じタイトルを遊んでいるプレイヤー同士での交流は、「互いに『同じ物』を経験している」という意味で繋がりがあり、楽しいものです。BLAZBLUEの場合、・ 格闘ゲームとしてのBLAZBLUEが好きな人 (キャラ自身に興味はあまりない)・ キャラクターの魅力が好きな人 (格闘ゲームは得意ではない)という人同士でも「同じタイトルを遊んでいる」ということで交流しやすい、という魅力があります。(森PがBLAZBLUEの基礎理念として「BLAZBLUEという『総合エンターテイメント』という言葉を掲げているのは、そういう意味合いでのこと) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前ページ次ページ魔導書が使い魔 「『エア・カッター』」 唱えた魔法は風の刃になり、後ろの大木を数本巻き込みながらソレを両断した。 上下を寸断されたソレは動きこそ鈍ったが、這いずりながらも進んでくる。 その様を見て少々顔が強張る。夜の暗闇で詳細が見えないのが唯一の救いか。 だが安堵しているヒマはない。 深き森の奥。遠くうめき声を伴って続々とソレは出てくる。 その中でも特に動きの速い集団が迫る。 それを見て、柔らかい腐葉土に杖を突き刺す。 詠唱は短い。 「『錬金』」 杖を引き抜くとすぐにその場から駆け出す。少しでも距離を稼ぐために。 だが“活きのいい”その集団はそれ以上の速さで追いすがり―― 先頭から転び始めた。 何度も不器用に立とうとして、また転ぶ。 ソレらは地面に広がる油にまみれていた。 息を切らせて走る。 途中途中『エア・カッター』でまとめて木を切り――不意に出くわしたソレら をも巻き込んで――防壁のように倒す。カバーしきれない分は『錬金』で腐葉 土を油に変える。 所詮は時間稼ぎだと判っている。 このままではいけないとも。 だが―― 繋いでいた手にギュッと力が込められる。 そちらを向くと、今にも零れそうな涙を目に溜めた少女がこちらを見ている。 タバサは少女の目を見つめ返すと、少女の心の内にある不安や恐怖が少しでも 無くなるように言った。 「大丈夫。あなたはわたしが護る」 トリステイン学院女子寮の一室。 日はとうに沈み、双子の月が頂から傾き、虫も眠る夜の帳。 「…………」 静寂……。 そこには静寂があった。 もちろん、空気の対流、舞う微量な埃、吐かれる息、規則正しい鼓動などなど を挙げれば動いていることになるのだろうが。 それは静寂である。 たとえ多少の動きはあっても、観測する者がそれを認識しなければそれは無き に等しい。 そう、動いたという認識がなければ全ては静止し静寂へと沈む。 この部屋の主、タバサは普段からその静寂を愛し、浸りそれを感受するのが旨 なのだが。 今日はいつもとは違う。 手に持つのは1冊の書籍。 彼女のお気に入りの本の1つであり、遥かなる想像の世界へ旅立たせる翼である。 「…………」 先ほどから覗き込んでいるそれは、1時間前からページは捲られておらず。タ バサは微動だにしない。 だが動かぬ体とは裏腹に、頭の中では様々な思想が飛び交っている。 思考を占めるのは昼、ヴェストリの広場で行われた決闘騒ぎ。 心配性の親友に付いて行く形で一緒にいたタバサは大体の流れは見て取ってい た。 メイドがギーシュから理不尽な怒りを買い、それをルイズとその使い魔の少女 が代わりに解決した事件。 結局ギーシュは負け、勝ったルイズも疲労か医務室へと運ばれていった。 そこまではあまり興味のないことがらである。 文字で羅列するとなんのこともない日常なのだが。 (――あの魔法はなに?) そう、その合間。劣勢であったルイズが、魔法が使えないゼロのルイズと呼ば れる少女が。ギーシュに勝った理由であった。 剣を取った後のルイズの動きは素早く、左手に光るルーンも興味を引いた…… が。 やはり使い魔と言われている少女が、ギーシュの『練金』した剣を“更に別の 剣へと『錬金』した”ことが一番の疑問であった。 剣をさらに『錬金』するとき、少女はなにも持っていなかったのである。 通常メイジが魔法を使うのには杖が必要となる。 メイジという存在は己の魔力を、杖を通して魔法として世界に放出する。それ は絶対であり、人間であるならばその前提を覆すことはできない。 倉庫でそれを例えるなら。倉庫がメイジ自身でその中身が魔力、杖は倉庫の扉 となっている。 メイジは倉庫から魔力を運び出すことによって、初めて魔力を魔法へと昇華で きる。 あの始祖ブリミルでさえ杖を使ったのだ。 だが、あの銀髪の少女は違う。扉のない倉庫から魔力を運び出した。 (……先住魔法?) そこで考え付いたのはそれだった。 この世界には、メイジとは違い杖を使わなくても使える魔法がある。エルフ、 韻竜、吸血鬼などが使う5元素以外の魔法。 彼らはそれを精霊の力と呼ぶ。 その力なら、杖を使わずとも魔法が使える。 だが―― (……違う) そう、あれは違った。 先住魔法とは、彼らが言う精霊の力であると考えられている。 それゆえに精霊、自然と関わりのある物でなければその力は発揮しない。銀髪 の少女が『錬金』した剣は、元々はギーシュが作り出した剣である。 手放したとはいえ、精錬した青銅は未だギーシュの魔力が篭っていた。早々操 ることはできないだろう。 となると、やはり銀髪の少女はメイジの魔法でも、先住魔法でもない“別系統 の魔法”を使ったことになる。 (違う系統の魔法――そういえば) パタリと書籍を閉じる。ようやく静寂が破られた。 閉じた本を置くと、代わりに別の書籍を手に取り、捲り始める。 「…………」 その題名は『失われし秘蹟』。 300年以上前に大陸中を渡り歩いたと言われている2人の冒険家の残した書籍で ある。 著者名は無く、そこには荒唐無稽の様々な冒険が綴られている。 専門家は「あまりに馬鹿げている。これは想像で書いた物だ」と一蹴した。 だが、本当にそうなのだろうか? 確かにこの話は、タバサも初めは空想の話として読んでいた。事実、信じられ ない話ばかりである。 海の底に沈みし大陸ほどもある巨大都市、遥か空から来る無形の異形、人が生 まれるより前からこの地に眠る邪悪なる神々、常人が見れば発狂する謎の言語 が書かれた石盤、人知未踏の場所で暮らす“人ではない人種”。 本来ならこのことを気にもしなかったであろう、だが。 「…………」 開かれたのはとある章。 そこへ書かれているものは―― その時、バサバサと窓からなにかが降り立つ。 「?」 窓枠には1匹の鳩。 この深夜。梟などの夜行性でないかぎり、鳥が夜に飛ぶはずはない。 だがその鳩をよく見ると、わかるだろう。 それが石で作られた鳩であることに。 ガーゴイル。 ゴーレムと違い力こそ無いものの、ある程度まで自立的に行動させることがで きる魔法人形。 「…………」 その石の鳩の足には、1通の便箋が結わえられていた。 上空3000メイル。 見渡す限り拡がる緑、吹き荒ぶ風の中。空を飛ぶ1匹の竜。 青い。空に溶けるような青い鱗を纏い、その巨体で悠然と空を飛ぶ姿を見れば、 誰もが見事な風竜だと息を呑むだろう。 翼は風を掴み、尾は風に流れ、体は風を突き抜ける。 空においては他に勝る生物はいないとまで言われる風竜は、まさに風の名に恥 じぬ貫禄を持って―― 「もうなんなのねあの王女は! きゅいきゅい!」 ――甲高い声を上げた。 厳つい、強面、ごつい。そんな形容詞が似合う顔から、まるで多感な少女のよ うな声が吐き出される。 「シルフィードはあいつ嫌いなのね!」 姿を見たものが見事と息を呑むのなら、声を聞いた者は驚愕に息を呑むだろう。 いくら竜は知能が高い幻獣だとしても、喋れるはずもない。 そして更に、聡い者ならその答えに行き着くだろう。そう人語を介し、先住魔 法をも操る一説には絶滅したと言われている風韻竜だと。 「お姉さまもそう思うでしょ! きゅいきゅい!」 自らをシルフィードと名乗った竜は、不意に自身の背中へと語りかける。 果たしてそこには―― 「…………」 背中に並ぶ鶏冠のような突起の1つに体を預け、タバサが座っていた。 風が激しく吹き流れ、これもまた空に解けるような青い髪を乱雑に撫でる。 そんな風の中、タバサはなにごともないかのように本を広げている。 「…………」 シルフィードの言葉にも反応せず、自分の世界を構築しているタバサ。 この強風の中、ページを捲る手は迷わず止まらず進めていく。 「あの王女なにが簡単な任務ね!」 それでもシルフィードの口は止まらない。 「相手もわからないのにどうしろと言うのね!」 ぴくりとタバサの手が止まる。 任務自体はそう珍しいことでない。 母国の王女は、なにかとタバサを目の仇にし。気まぐれに危険な任務へと向か わせる。 大抵はその相手ぐらいは教えてくれるものなのだが。 脳内にその声が再生される。 『今回の任務は化け物退治よ』 多数の使用人が控える部屋の中心。 退屈そうに椅子に座る少女が言った。 「山岳地帯で村々が襲われているって話」 タバサと同じ青い髪を揺らし、少々装飾過多なドレスに身を包んだ少女――イ ザベラはタバサを見る。 そこに浮かぶのは蛇を彷彿とさせるようなネットリとした憎悪。 「なんでも、その化け物に襲われた村は死体が1つ残らず消えちまうらしいん だよ」 イザベラはタバサの傍まで歩み寄ると、その端正な顔をスレスレまで近づけま るで好物を前にした獣のようにぺろりと自身の唇を舐めた。 それは到底王女のする行動ではないが、見た目の気品にその粗野な行為は妙な 生々しさを色づける。 「さあ、どんな化け物なんだろう。一部じゃ、メイジに住処を負われた吸血鬼 の集団が、村々を襲って全員グールにしている、なんて噂もあるが。そんな可 愛いものだったらいいねぇ。ははははは!」 堪えきれないという様に笑うイザベラ。 俗に言われる吸血鬼とは、日光に弱いが多少なり先住魔法を使え。人よりも高 い身体能力。また血を吸うことで人間を1人を意のままに操れるとくる。 そしてなによりも、完璧に人に擬態することが出来る。それはメイジでも見破 ることは適わず。吸血鬼とは夜の狩人、人狩人(マンハンター)と呼ばれる人 間の天敵のような存在なのだ。 決して可愛いと呼べるものではない上に、村人全員をグールにできるような集 団など笑い話にもならない。ここでイザベラがわざわざ出したのは恐怖心を煽 るためであったのだろうが。 「…………」 タバサは無言。 「なんとか言ったらどうなんだい人形娘!」 焦れたのか、イザベラがタバサの顎を掴み強引に目を合わせ。 「…………」 その瞳は、まるで底無しの井戸のような途方もない虚無と、凍えるような冷た さを有していた。 「――っ!」 思わずイザベラは手を離す。 「せ、せいぜい死なないように祈ってあげるよ!」 椅子へ座りなおすと、まるで自分が怯んだことを取り繕うように言い放った。 「きゅい! お姉さま聞いてるの!」 タバサはその声で現在へと引き戻される。 「さっきから本ばっかり読んでシルフィードの話をちっとも聞いてないのね!」 ぼんやり思考に浸っていたのだが、話を聞いていないという点では同じか。 「お姉さまは悔しくないの! あんな王女に変な命令されて!」 「…………」 「きゅいきゅいきゅいきゅいっ!」 不満を表すようにグラグラとシルフィードが体を揺らす。 だが、まるで接着剤で着けているかのごとくタバサは定位置から動かない。 「無視しないで! 無視しないで! お話したい! お喋りしたい! お肉食 べたい! お腹がすいた! お腹がすいた! お腹がすいた!」 なぜか途中から欲望に忠実な発言へと切り替わっているが、本音はこれだろう。 だが。 「…………」 タバサはただ黙々とページを捲った。 更なる実力行使に出ようとシルフィードが構えたとき。 「見えた」 「きゅい?」 すっとタバサが杖を差し出す。その先には――山々の緑の中に埋没するように 村があった。 ザビエラ村。林業と王宮の料理人も注文する山菜を主とした村である。人口は 350人前後。周囲の村と比べると人口はそこそこ多いが、多すぎるほどではな い。 だが最近周囲の村々から連絡が途絶え。様子を見に行った者が見たのは。 無人の家々と、大量の血の跡であった。 そして大量にあったそれに比較しても、死体の1つも見つからない。 またそれと時を同じくして、森の奥で不気味に徘徊する大量の人影を見たとい うのだ。 その様子から村人は恐らくは吸血鬼のグールだと思い、王宮へと助けを求めた というのが報告書の中身である。 確かに人を自由に操れるのは吸血鬼だが。 そこまでの状況を吟味しているタバサの脳内に疑問が生まれていた。 それは本当に、吸血鬼なのだろうかと。 いきなり村の中心に下りると混乱を招くと判断したタバサは村から少し離れた 場所へシルフィードを着地させた。 シルフィードの背から降り立つ。 少し高い場所になっていて、ここからは村が見下ろせる。 見る限りは平凡な田舎の村なのだが。 よく見ると、昼間だというのに出ている人数はほとんどなく、どことなく寂れ かけた村の腐臭が漂ってくるかのようだ。 それを見て、タバサは歩き出そうとして。 ぐい、とマントが引っ張られる。 振り返ると、マントを咥える風竜が1匹。 「なに?」 素朴な疑問をあげるタバサ。 「お姉さま、わたしはどうするの?」 「…………」 タバサは少し考えると。 「空で待機」 「嫌なのよ! 嫌なのよ! お腹がすいた! ご飯食べたい!」 ジタバタと暴れるシルフィードを見て、ゴンとシルフィードの頭を杖で叩いた。 「痛いっ!」 あまり力を込められているようには見えないが、かなり痛かったのだろう。 うーうーと唸っているシルフィード。 タバサは1つため息を吐くと。 「後でご飯を貰ってくる」 「きゅいっ!」 キラキラと目を輝かせるシルフィード。 「ほんとなのね? ほんとなのね? ほんとなのね?」 しつこく念を押すように聞いてくるシルフィードにタバサはコクリと頷いた。 「さすがお姉さまなのね! るる~る~――痛いっ!」 今にも踊り出さんばかりに歌い出したシルフィードの頭をタバサは杖で叩く。 「お姉さまなにをするのっ」 「喋らない」 タバサが静かに言うとシルフィードはシュンとして鳴いた。 「きゅいー……」 それを見たタバサは、背を向けて村の方向へ歩き出す。 「お姉さま! ご飯たくさんもらってきてね!」 背後でシルフィードの羽ばたく風の音とそんな要求が聞こえた。 「おお、よく来てくださいました。騎士様」 歓迎の礼を取り、村長と名乗った白髪の老人がタバサを迎える。 それにタバサは名乗った。 「ガリア花壇騎士、タバサ。“風”の使い手」 「騎士様。どうか、村の不安を晴らしてください」 そう言い頭を下げ頼み込む村長だったが、遠巻きに見ている村人の反応は違っ た。 騎士の話を聞いて集まったはいいが。タバサの姿を見ると露骨にため息を吐き、 ひそひそと話し合う。 「見ろよ、あれが騎士だってよ」 「まだ子供じゃないか」 一時は期待に顔を輝かせていた村人たちの間に、重い空気が立ち込める。 「大丈夫なのか?」 「さあ? でも杖を持っているから少しぐらい魔法は使えるんだろ?」 決して大きくはないが、かといって抑えているわけでもないその声はタバサに も聞こえるが。 「…………」 タバサ本人は気にもしていないのかただ無言を突き通した。 「こらお前たち」 村長が軽く嗜めるも表向きは黙るが不信な瞳は変わらなかった。 「お前たち、せっかく騎士様がな――」 それに更なる言葉を費やそうとした村長だったが。 「いい」 「騎士様?」 タバサが村長を制する。 「それよりも、状況を説明して」 申し訳なさそうにしている村長に、タバサは先を急かした。 「はあ、それでは話はわたしの家で」 そう言うと村長が率先して歩き出す。その後ろをゆっくりと付いて行くタバサ。 「…………」 その姿に向けられる視線は、依然冷たいままだった。 村長に連れ立っていくタバサを見送った後、村人たちは口々にその思いを言っ た。 「あんなのが騎士だなんて」 「王宮め……子供なんて送ってきやがって……」 「税を搾るだけ搾って、いざこちらが助けを求めてもこんな仕打ちとは」 「やはり、無能王の名に偽りはないみたいだな」 出るものは不安に嘲り憤慨に失望。 期待していた者とはあまりにもかけ離れた人物が来たことで、村人たちが抱え ている黒いものが次々に吐き出されていく。 「どうするんだよ。あの騎士様は役に立ちそうにないし」 ふと1人が漏らした言葉がみんなの心を縛った。 まだ実際の被害に出ていないが、逆にそれが村人たちの不安を増徴させている。 正体がわからない。 未知の恐怖、対策をどうとればいいかもわからない状況に彼らは怯えきってい た。 そんな中。 「あの騎士に頼れないなら、俺たちで解決すればいい」 そう言ったのは、薬草師であるレオンだった。 村1番の切れ者だと自負しているレオンは皆へ向き直る。 「なんでも近くの村を襲っているのは吸血鬼の集団らしいじゃないか」 彼は語る。 「吸血鬼はずる賢い。だがあっさりと村が消えたのはおかしい。いくらなんで も急に襲われたとしても1人ぐらい免れてもいいはずだ」 それは確定していない、有象無象の噂の1つだった。 「そうすると、吸血鬼が村に入り込んで手引きしていたからに違いない」 だが、 「そ、そうに違いない!」 人々は正体のわからない相手に明確な“形”を与えられたことに、ある種の “安堵”をした。 それはとても楽なことだろう。吸血鬼は人にとって最悪の部類に入るのだが、 みなは未知への恐怖から既存の恐怖へと逃げた。 「だ、だったら誰が吸血鬼なんだ」 「そうだ、誰なんだ!」 まだいるともわかっていない相手(吸血鬼)を探す者たち。 決して愚かしいと笑うことなかれ。 決して嘆かわしいと嘆くことなかれ。 彼らは苦しみ、その救いを求めているだけなのだから。 「みんな、よく考えてみろ」 だから彼は語る。 それはまるで熱弁を揮う演説者のように、指揮棒を振るう指揮者のように、暗 闇に恐れる子供のように……。 「最近この村に来たやつらがいるだろう?」 「あの占い師のアマンダ婆さんか!」 ああ、誰よりも賢き彼は。その実、誰よりも恐れているだけなのだ。 「たしかにあの婆さんは病気だなんて言って昼間も外に出ねぇし、吸血鬼に違 いねぇ」 「でも息子のアレキサンドレは日中も外に出てるぞ」 「それはアレキサンドレがグールだからだよ」 「そうだなアレキサンドレなんて向かえの娘と乳繰り合うようなことを聞いた ぜ。血を吸おうと狙ってるんだ」 恐れるべき相手がわかったことで、急速に広がっていく憶測。 それは留まることを知らず、皆へ伝播していく。 そして皆の視線がレオンへと止まる。 「そ、それでどうするんだレオン」 やはり憶測で語ることにどこか不安が残っているのだろう。窺うような物言い にレオンは迷いなく応えた。 「それは簡単だ」 彼の目には嗜虐の喜びと、意識しない恐怖が宿っていた。 「俺たちでこの村を守るには、天敵たる吸血鬼を排除するんだ」 平凡な家々が並ぶ中、村長の家は他の家よりも多少大きいといった程度で。中 の様子も田舎の家らしく質素なものである。 応接間へと案内されたタバサはそこで村長から改めて話を聞き終えていた。 「本当に、その村には死体1つなかった?」 出されたお茶を手に持ちながらタバサが改めて聞く。 「はい。その村へ行った若者の話では」 結局、村長の話したものは報告書の内容と大差はなかった。 「森で見た人影は?」 「はあ、複数人が不審に徘徊していたとしか」 そうして話を聞きだし、無駄な情報をそぎ落とそうとしているのだが。あまり にもこちらの話が不透明すぎた。 ほとんど、近くの村人が消えた以外には確実な情報がないである。 メイジに負われた吸血鬼の集団。森にいる大量のグール。 その2つは冷静に考えればあるはずもない。 だけど実際に人の消えた村があることから皆は不安から噂を作ることにより、 心の平静を保とうとしているのだろうとタバサは推測した。 「……そう」 一息入れるためか、タバサは手にしたお茶を口へ運ぶ。 お茶を含むと独特の苦味が口内に広がっていく。 この村の自慢の特産のムラサキヨモギで入れたお茶だそうで。栄養価が高く、 遠く他国からも求める料理人がいる。だがその味は基本的に酷く苦い。多少な ら料理の味を引き立てるが、よほどの物好きでない限り好む者はいないのだが。 「…………」 さきほどからそのお茶をタバサは頻繁に飲んでいる。 はじめ村長が飲んだとき、顔をしかめて淹れる茶葉を間違えたと言っていたが。 目の前で黙々とお茶を飲み、何度もお代わりを頼む彼女に驚いていた。 「…………」 「…………」 暫しの沈黙。 タバサが10杯目となるお茶に口をつけた時であった。 「あの」 沈黙に耐え切れなくなったのか、村長が口を開いた。 それは心に燻っていた不安だったのだろう、弱弱しく吐き出された不安は。 「噂ではこの村に吸血鬼が――」 「それはない」 タバサによって断ち切られた。 「今の話を聞く限りでは吸血鬼が行った行動にしては不審点が多すぎる」 二の口を告げなくなった村長は居心地が悪そうになった。 少し言い方が悪かったかと思ったが。憶測や噂で勝手に想像を膨らませて、勝 手な行動を取られてはタバサとしても行動がしづらい。 可哀想だがそういう話はバッサリと切らなくてはならない。 別の意味で空気が重くなる。 その状況を変えようとしたのか。タバサが11杯目のお茶のお代わりを頼もうと した時。 ふと、視線を感じた。 そちらを向くと、開いた扉の影から小さな目がこちらを覗いていた。 「……?」 「――っ」 タバサが目をそちらに向けると、目は扉に隠れてしまう。 それを怪訝に思ったのだろう、村長もそちらに目を向けると。 「おお」 その相貌を崩した。 「こちらへおいで」 村長が声をかけると小さな影がパタパタと扉から出てきて、村長へと駆ける。 「ほら、騎士様に挨拶を」 小さい影は村長に抱きつくと、村長は優しくその影の背を叩き促した。 影――5歳ぐらいの美しい金髪の少女は、恐る恐るとタバサを見て。 「――」 その杖に目が止まると、顔を強張らせて村長へと顔を埋めた。 「――っっ!!」 よしよしと背を撫でる村長を見て、タバサは口を開いた。 「その子は?」 すると村長は少し苦い物が混じった笑みを浮かべる。 「この子はエルザと申します……先ほど話した村の唯一の生き残りです」 びくりと少女――エルザの背が震えた。 タバサの目が細まる。 「なぜ、さっき話さなかったの?」 少し責めるような口調になったがしょうがない。ほとんど無いに等しい情報の 中、唯一報告書にもない新たな情報源。 いくらあっても足りず、いくらあっても困らないのが情報である。 「待ってください」 それに耐えかねたのか、村長がタバサへと口を開く。 「なに?」 「この子は……なにも知らないのです」 「なにも、知らない?」 「この子は、村が全滅する前の日に近くの森で迷子として見つけられたのです」 村長がゆっくりとエルザの頭を撫でる。 「無人の村を見た若者も、この子のことを連絡するために向かったのです」 「……」 「この子は村を、両親をなくし行き場もなく、今は私が預かっています」 エルザの頭を撫でる村長の顔にはまるで実の子を労わるような表情が浮かぶ。 タバサが視線を視線を向けると、エルザは深く顔を埋めた。 「すみません、その……この子は村を無くした不安か。他人に中々懐きません で」 「……そう」 落胆からか、視線を外したタバサは再びお茶を手に取り、中身が無いことに気 がついた。 「ああ、お茶の御代わりをお持ちしましょう」 村長が立ち上がり、それにつられるようにエルザもついていく。 なにもすることがなく、タバサは窓の外へと視線を向けると。 「――」 突如として立ち上がった。 そのまま玄関の扉へと向かうタバサに問いかける村長。 「騎士様どこにへ」 それに杖で窓の外を指し。 「止めてくる」 そのまま出て行った。 「……一体何が」 首を傾げ窓の外を見た村長が見たのは、1軒の家を取り囲む大勢の村人であっ た。 家を囲む大勢の村人。 「吸血鬼をだせ!」 「出て来い! 吸血鬼!」 その手には鍬や棒、中には火の付いた松明を持ち、ドロリと憎悪と殺気に染ま った目を向けている。 そして家の入り口へと入ろうとする大勢を前に1人。 「だから! おっかぁは吸血鬼じゃないって言ってるだろ!」 真っ向から立ちはだかる大男がいた。 「どこに俺のおっかぁが吸血鬼だという証拠があるんだよ!」 その言葉に黙り込む村人達だが。 1人、利発そうな青年が村人たちの間から歩み出てきた。 「じゃあ、逆に聞こう。どこにあの婆さんが吸血鬼じゃない証拠があるんだ?」 薬草師のレオンである。 「そんなの屁理屈じゃないか!」 「そもそも占い師だと言うのに、この村に来てから誰も占うことも無く。一度 だって家から出たこともないじゃないか」 「病気で寝ているだけだ!」 「話にならないなぁ。だったら僕達の前に出すぐらいわけないだろう?」 「そんな物騒な物を手に持ってなに言ってやがる!」 「ただ僕達は吸血鬼かどうかを調べるだけなんだよ。大丈夫、吸血鬼じゃない なら殺しはしないよ」 「安心できるか!」 「じゃあ、しょうがない。無理矢理でも調べさせてもらうよ」 そうレオンが言うと、他の村人たちが家へ入り込もうとし、その前にアレキサ ンドルが立ちふさがる。 それに困ったようにレオンが言った。 「アレキサンドル。どいてくれないかな? 吸血鬼を殺せないよ」 「だから! 俺のおっかぁは吸血鬼じゃないってんだろ!」 一種即発の空気が流れる。 ギリギリと睨みあう双方。 そしてそれを見つめる村人達。2人の衝突は彼らの意思まで仰いでいき、つい に場が決壊しそうになった時。 「なにをしているの」 冷たい声が響いた。 村人達が道を開ける。 「き、騎士様」 「ち」 そこからタバサが2人の元へ歩いてきた。 「なにをしているの」 にらみ合う2人の間で脚を止め、タバサは再度問う。 すると周囲の村人たちが興奮した様子で騒ぎ出した。 「吸血鬼を殺すんだ!」 「そうだ! 俺たちでこの村を守るんだ!」 「邪魔をするな!」 殺気立つ村人たち、それは周囲にも伝播し異様な熱気を呼び込むが。 すっとタバサが杖を構えた。 すると周囲は一斉に黙り込む。 たとえ見た目が子供でも、メイジであり魔法が使えるということはある種の絶 対権力を持つ。 メイジに逆らうことは出来ないという、常識で育った者達を黙らせるにはそれ は有効的だった。 黙り込んだ村人たちを捨て置き、タバサは再三の問いをレオンとアレキサンド ルに付きつけた。 「なにをしているの」 「それは……このアレキサンドルの婆さんが、吸血鬼かどうかを調べるために ……」 苦しくもそう応えるレオンにタバサは静かに言う。 「調べる必要はない」 「そんな! でも確かに吸血鬼はこの村に!」 「それは誰が見たの」 興奮し喋るレオンにタバサはあくまでも冷静に返す。 「吸血鬼がいるかどうかは噂に過ぎない。誰かが確実に見たという証言も無い」 「で、でもっ! 俺はグールを見たんだ!」 レオンはなにかに恐怖するかのように叫んだ。 「あの日、確かに森の奥で! 不気味に動くやつらを見たんだ!」 それは恐怖と言うより畏怖に近かった。 恐れるというレベルではなく、すでに心は折れているのだ。 だがそんな彼の心中を察することが出来るほど、タバサの精神は老齢しておら ず、その手の経験もない。 「それは本当に、確実に、グールだった?」 だからこそ、冷静に現状と状況を俯瞰し彼に問い返した。 「か、確実かと言われれば……」 言葉を濁すレオン。 「でもあれは人間じゃない!」 「それだけでは、グールましてや吸血鬼が関与しているとは断定できない」 「だがっ!」 詰め寄ろうとしたレオンは。 「なにをしておるか!」 割り込んできた声によって遮られた。 「村長!」 村長はゆっくりと3人の下へと歩いていく。 「先ほどから吸血鬼だ、グールだなど騒いでおるが。そんなことよりも、疑い なく他人を攻めていることのほうが私は怖い」 その顔には紛れもない悲しみが宿っている。 「…………」 押し黙る一同。 その村長の説得の甲斐もあってか、1人また1人とその場を離れていき。 残ったのはレオンとアレキサンドルの2人だった。 「っく!」 レオンはアレキサンドルを睨んだ後、その場を後にする。 「ありがとうございます騎士様」 ため息を吐きながら村長は言う。 「わたしは何もしてない」 タバサがそう返すが、村長は首を振る。 「いえ、私だけでは彼らは止まらなかったでしょう」 「俺からも、おっかぁを庇ってくれてありがとうございました騎士様」 アレキサンドルもその大柄な体に似合わず(逆に似合うのか)、ぺっこぺっこ と頭を下げる。 「……結果的にそうなっただけ」 そんな2人にタバサはそっけなく返した。 すると村長がぽんと手を叩き。 「おお、そういえばそろそろ夕食の時間ですが騎士様もいかがですかな」 少しタバサは考えた。 あまり時間をかけるのは得策とはいえない、暗くなる前に無人となった村へ調 査に行きたいのだが。 そこまで考え、夕食を断ろうと口を開いたとき。 「うちの家内が腕により掛けた料理を作りますよ。今夜は特製ムラサキヨモギ の煮込みスープです」 「――」 「騎士様は苦いのがお好きなようですが、いかがですか?」 「ぜひ」 きゅぴーん、と擬音が鳴りそうな目の輝きを見せながらタバサは頷いた。 夜。 満月に近くなった2つの月の光が部屋に入り込み、タバサの横顔を照らす。 大量のムラサキヨモギのスープと山盛りのムラサキヨモギのサラダをお代わり に次ぐお代わりにより、結局は日が落ちるまで食べてしまったタバサは、村長 の勧めのもとその家に泊まることとなった。 いくら魔法が使えるとはいえ、暗い夜道で獣に不意を突かれれば危ない。 調査は明日に回すことにして、あてがわれた部屋で今は静かに杖を磨く。 杖を磨くことに意味があるのかと言えば、意味はある。 見た目の立派さや装飾など無きに等しい杖だが、潜り抜けた戦闘の頻度は凡庸 なメイジの杖とは比較にならない。時には魔法の行使ではなく打撃にも使うこ の杖は、亀裂や磨耗が致命的になることもある。 そうなると自然、杖を磨くのではなく点検といった具合になる。些細な汚れの 下に亀裂が隠れているのかもしれないからだ。 大方拭き終わり、ヒビも曲がりもないことに安堵をした。 まあ、杖にはスクエアメイジによる『固定化』がかかっているので、自然と朽 ちることはほぼないのだが。 一先ず杖を横に置く。ここはある程度の安全を保障された学院ではない。安心 できる場所以外では彼女は杖を常に傍に置いて何事にも対応できるよう体に教 え込ませている。 ふと、窓から空を見上げる。 満月が近い空は、大きな月が空を占める。 それはまるで矮小な人を嘲笑うかのごとく空を占領する。 タバサは昔読んだ哲学と詩とが混じった本を思い出した。 『夜空は舞台である。 暗闇の暗幕を掛け、それを切り裂くのは主演の月の光。それを支えるは星の針 光。 その夜空の下にいる者全ては観客へとなり果て、朽ち果てるまで空を貪り見る こととなる。 限られた参入者は、空を飛ぶ獣か、空を侵す“ナニか”である』 その書の著者は翌年に塔から転落死をしたという。 唯一“獣以外で空を飛ぶ手段を持つメイジ”だというのに。 彼はどうして死んだのか。それも空に近き場所から。 空には本当に“ナニかが”いるのか。 タバサは得体の知れない恐怖で体を震わせた。 ギシ。 その物音がしたとき、すでにタバサは杖を突きつけていた。 物音の音源。わずかに開かれた扉の隙間から、見覚えのある金髪が揺れる。 「ひっ!」 それは村長が保護している少女、エルザであった。 硬直したエルザを見るとタバサは軽く息を吐き、杖を降ろす。 益体も無いことを考えていたせいか神経が過敏になっていることを少し反省し、 エルザへ話しかけた。 「どうしたの」 その声にエルザはようやく硬直から開放されるが、先ほど杖を突きつけられた ことからか中々扉の傍から動こうとはしない。 なぜここまで少女が怯えるのか。 よく見るとエルザの視線はタバサの持つ杖へと注がれている。 昔メイジとなにかあったのかと推測し、杖を少し遠い場所へと立てかける。 その間も少女の視線は杖へと注がれているが、そこばかり気にしているわけに はいかず、ベッドに腰掛ける。 「どうしたの」 2度目の問い掛けにエルザはびくりと震えると、ゆっくりとタバサへと近づい てきた。 まだ杖を横目で気にしているが、それでも震える口を開いた。 「お姉ちゃんは、なにをしにきたの?」 その問いにタバサは少し考え込んだ。 この少女はタバサがなにをしに来たのか判らない知盲ではないだろう。 本当の“ソレを”知っているタバサは少女にはそれ相応の知性があると読み取 れた。 少女はタバサのしていることを知っている。その上で、タバサへ問うているの だ。 なにをしに来たのか、と。 「わたしは……」 当てはまる言葉は色々ある。 仕事、任務、もっと端的に言うなら事件の解決。 だが、どれを言っても少女は納得しないだろう。 その目に宿る知性は、そんなことを聞きにきたのではないと語るようにタバサ には見えた。 だからだろうか、そっとタバサは自分を抱きしめる。 「わたしは……」 心に浮かぶは幼き日の思い出。 常に吹き荒ぶ吹雪の中で宝石のように大事に仕舞っている大切な日々。 そしてそれを護るように、囲うように燃え盛る静かなる業火。 「成すべきことを成すためにここにきた」 その全てを吹雪の奥へ、巨大な氷山の深層へと封じ込め少女への答えとした。 「…………」 静かに目を見つめる。 「おねえちゃんは、氷のような目をしているね」 少女はなにを感じたのだろうか。 「まるで、わたしみたい」 小さくその身のことを語る。 「なにもかも凍りついた心の下に押し込めて、それでも押し込めた物は消えて ない」 少女はタバサの隣に座った。 体を更に縮めるように体を抱きこみ。 「ねえ、聞いておねえちゃん。わたしはね……」 その身に溜め込んだ物はいかほどのものなのか、その心に刻まれた傷はどれほ ど深いのか。 「お父さんとお母さんをメイジに殺されたの」 「……そう」 未だ月は頂点にも達しておらず、虫は騒ぐ。 ただ、その光は哀れなる地を這う者を嘲笑うように全てを照らす。 少女の語る話は、吹雪いた心になにをもたらすのだろうか。 夜はまだ落ちない。 山深い森の中。その中でも比較的開けた場所にそれはいた。 大きな体、固い鱗、とがった爪、ギラリとした歯、鋭い瞳。 それは横たえた体をむくりと起き上がらせると空を睨む。 それはまるで空を恨むように、空を憎むように。 まるでなにかに焦がれるかのように。 その大きな首を空へと向け。 「お姉さま! シルフィードのご飯ーっっ!!」 空腹のおたけびを上げた。 エルザの言葉に耳を傾けていたタバサは、ふとなにかを忘れているような気が したが。 「…………」 気にしないことにした。 静寂に沈む森。 そこには動く物はおらず、全ては月光の陵辱の元で物言わぬ観客へと成り下が る――はずであった。 初めは小さな音だった。 だが、それを聞いた獣は一斉にその場から離れだした。 静寂が、一時にして多種な雑音に取って代わられ。 再び訪れた静寂の中――ソレは現れた。 ソレは飢えていた。 ソレは喋らない。 ソレは感じない。 ソレは考えない。 ソレは欲しない。 ソレは止まらない。 ソレらは群れとなりただ進む/進む/進む/進む。 ただ愚直なまでに、ただ盲目的に、ただ命じられるままに。 ソレには腕がない。 ソレには脚がない。 ソレには臓物がない。 ソレには頭がない。 欠けて=失って=落として=零して。 五体満足な者などただの1体としていない。 何よりソレには――命がなかった。 鬱蒼と茂る木々草木に脚を取られるが気にもしない。 ソレは脚を引きずり、腹から零れた臓物を引きずり、足が欠けた者は這いずり、 腐った腕をぶら下げ、中には死した赤子を引きずる者いる。 その口から漏れるのは風鳴りにも似た低音。 まだ暗き森の奥から重なる複数の音。 それは澱んだ魂の放つ怨鎖の叫びか、生者を羨む渇望の声か。 その音は、森の奥から奥からいくつも響いてくる。 数とはその強大さを少しでも支配しようとする人間の考え付いた小さな傲慢。 だが、数え切れないのならば、それは恐怖へと変わる。 1が2へ、2が10へ、10が大数へ……。 ソレらの大群は静かに、だが確実に静寂を犯し進む。 うっすらと霧が森を包む。 もし感性の高い者がその霧に触れたら、気が狂えるほどの恐怖を味わうだろう。 それは死せる者達から漏れ出した濃い怨念と魂の残滓なのだから。 その怨念と残滓は現界を冒す瘴気となり、土を木を草を空気を腐らせていく。 正気な者は耐えられまい、正常な者は留まれまい。 ソレらは、自ら出した瘴気で自らを腐らせながらも進む。 静寂を保っていたはずの森が、ゆっくりとそして確実にその“怪異”に犯され ていた。 だが、その“腐りの中心”。 そこには他とは違う者が居た。 それはローブを頭から被り、瘴気の真っ只中にいて動じた風もない。 木々の間、月の光がその身を照らした。 ローブはまるで砂漠の民のように黄色に染まり、その端々には絢美とも言える 細かな装飾がある。 体を包むその布は、体を隠してもその線までは消しきれず、凹凸の効いたその シルエットは女であると主張し、その歩き方からも気品すら感じさせる。 だが、ある一点がその者自体に疑問を投げかけていた。 それは、ローブの奥。照らし出された仮面。 それは嘲笑っていた。 まるで三日月のように刻まれた口、抉り抜いたかのような両の目。 笑う、嗤う、哂う。 その仮面は、女は全てを嘲笑っていた。 雲が月を隠す。 月の光を失い、ソレらは――女は暗闇へと沈む。 暗闇へと染まる森。 だが、森は確かに“怪異”に侵され、今もソレらは進んでいた。 前ページ次ページ魔導書が使い魔
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ノV || /| / //ヽ、/∠/ // / / / /|/ | \ | / |/ // / // / / / / | \ \ | / / //_ レ /i |i \ | / / / _ /||~ヽ |ヽ __ ヽ |/ // / | || | / \___ \/ / / /´ | | | |⌒ー‐===ヽヽ |/ /_,,, | | ヾ! /´_rュ_ヾ | ヾ/ /,二、~ヾ! | | `´ /( レ-、 ̄| / --rュ_! / ヽ /,! i;〉 ( | / | 〉-、 ヽ `'‐'__| / / / r、 ', /二´‐〈 / ||ヽ ', /∠-‐'""") |ヽ | \ヽ| ', '´ !-'"´ ̄( へ|i | |rヽri', ___| / \! | | | '-', / / | イ / | | ヽ / | | /| | |、 \ \ | / | / レ、 |/| \ \ \__/| |-''´ / ノ|/ | \ `'‐ 、 | ヽ / / | 吸血鬼族。 アルクェイドの世話係り。 かつて帝国の法王だった男と同名。
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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「バカな、キュルケ… ホントに、なんというおろかなことをしてくれたんだ」 地べたに転がったまま、ギーシュは奥歯がガチガチ噛み合わなかった 鳥の巣頭がチリチリと焼け焦げアフロと化したあの男は しばらくボーゼンと立ち尽くした直後 ブワァァァッ ビンッ ビンッ ビンッ カゲロウのように周囲の空気をゆらめかせ、 髪の毛があおられるように逆立っていく 「アレのことをいうのか? 怒髪天っていうのは… あいつはもう止まらない 取り返しがつかないんだぞッ!?」 「ったく、非ッ常識な頭だこと…」 「まっまだ怒らせる気かぁ――ッ」 ヒステリーのようにわめくギーシュを放って キュルケは考える (「殺す」のは簡単だと思うけど… トライアングルメイジの全力を以てすれば、ね) 「殺し方」はすでにできていた あの男がこちらに近寄ってくるところへ 火×1の魔法で足下に火を放ち、さえぎる ムカドタマ真っ最中の男は迂回などせず ナゾの力で地表をまとめてぶっ飛ばし鎮火するだろう 一瞬だが足は止まる さすがに生身で炎に突っ込むわけがない そこへ火×2の魔法で扇状になぎ払い、とどめとなる 火×3は使わない、長い射程は必要ない どうせ近寄ってくるのだからそのときが最後だ 灼熱の中で窒息しながら焼け死ぬのだ 必要とあらばやる キュルケはそれができる女だった だが、それだけでもなかった 「…」 チラリと見る ルイズとは、先祖代々宿敵同士なのだ こと、微熱のキュルケの性(さが)において その因縁はきわめて重大だった 「……」 (この私が本気を出すの? ゼロのルイズの使い魔に? …却ッ下だわ、そういうのはね…大人げないっていうのよッ) 男がこちらに歩いてくるのが見えた 嵐の前の静けさというやつだった 殺さないなら方針も違う そのためのギーシュだった 「手伝ってもらうわ、ギーシュ…ちょっとばかりね」 「手伝えだって? 無責任なッ アレをああしたのは君じゃあないかッ!? ボクは知らないぞ、知らないんだッ」 「大金星を拾えって言ってるのよ、あなたに」 「ああ、口ではなんとでも言えるだろうさ 人を乗せるのがウマいからな、キミは だけどボクはだまされないッ」 キュルケの目がスゥッと細くなった ビクッ 「な、なんだね、今度は脅そうとでも言うのかい?」 「そ…『あのこと、バラすわよ』」 ズン ある意味、最悪の魔法だった ギーシュには身に覚えがありすぎた 「な、何だい? あ、『あのこと』とは?」 「『あのこと』よ」(フフフ…) ザッ!! 戦闘態勢をとるキュルケ これ以上はさすがにノンビリかまえていられないッ 「あいつが『ぬかるみ』にハマッた瞬間に、錬金で足下を石に変えるのよ、いい?」 「『ぬかるみ』だって?」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「ハマッた瞬間でなければ意味がないわ、目をこらしてなさい…」 ボンッ 再び放たれた火球は、今度はまっすぐ男に向かった 避けなければ焼けて死ぬ これで決まれば世話はない キュルケは素早く駆け出していた 「あなた、どこのどちら様? カッコイイわよその髪型…最初のアレよりずっとねぇ?」(フフ) 走るついでにオチョクッていく 知らない言葉を使っていたようだが 笑われたことに怒っているのなら多分通じているのだろう そうでなければアレは危険な狂戦士(バーサーカー)だ 殺してしまった方が世のためということ ダムッ 男は炎を横飛びに回避してからキュルケに向かって飛んでくる これでふたつわかった ・男は炎の直撃に耐えられるとは自分でも思っていない ・バカにされていることを理解するだけの脳ミソはある だが、飛んでくる勢いが大砲のそれだったことだけはわかりたくもなかった ギャン!! 一瞬のうちに2メイル以内にまでカッ飛んできていた 走ったくらいじゃどうにもならない (何よ、これは… 風系統の魔法じゃない 杖がなきゃ魔法は使えない 地面を殴って、その反動で自分を飛ばしてきたとでも言うの? …とにかく、まずいッ!!) 反射的に身をかばい、顔の前で腕をバツの字に組む 今度は威力を知る番だッ 「DORAaa!!」 ズドドバァ 見えない拳が突き刺さる すれ違いざま五発くらいが飛んできた ドッ ミシッ パキッ ポキ ゴシャア 第七肋骨、亀裂!! 右肩胛骨、亀裂!! 右手骨、粉砕ッ!! キュルケは全身に疾る鈍い音を聞いた ゼロのルイズと同じように空中に舞い上がり、落っこちる 目の前が真っ暗になっていたが、おかげで意識はなんとか戻る 馬車に轢かれた気分だった 少しの間、遅れてきた痛みに歯を食いしばって仰向けに空を見上げていたが 「いッ…… ~~~ ッたいわねぇぇぇぇッ!!」 身を転がして一息に立ち、闘志のメーターが恐怖にふれかかったのを怒鳴り散らして引き戻す パワーはともかく、速さを読み違えていた あの男は20メイルをひとっ飛びで駆け抜け すれ違った相手を五発は殴って反対側に着地できるらしい あまりうまく着地はできなかったようだ 逃げて端に寄っていたクラスメート達のド真ん中に転がり込んだ男は 草にまみれて肩口を押さえていた キュルケはすかさず頭の中でメモを付け加えた ・最初に考えた「殺し方」はダメだ 高速で突っ込まれたら対応できない ・だがアレは、あの攻撃をやりなれてはいない うまくすれば自滅を誘えるかも… 一方、追いついてきたコルベールはツルリ光る頭を抱えたい気分だった あの男は危険すぎた 放っておけば死人が出るだろう だからその前に私が殺す 殺さねばならない そう思っていた だが (生徒の中に着地するとは…) コルベールもまたトライアングルメイジである 火×3の魔法で男の周囲のみに局地的な完全燃焼を起こし アッという間に窒息死させるつもりだった どんな能力を持とうが、どんな力で殴れようが関係のない処刑法だった 彼の理念に真っ向から反する行動だが生徒のためならやむをえなかった だが見ての通り目論見はつぶれた (これでは皆まで巻き込んでしまうぞッ…!!) 「このぉぉッ、イミフメーな髪型の分際でキレてるんじゃないわよッ」 なんということだ 聞こえてきたあの声を叱りつけねばならない 「やめなさいミス・ツェルプストー ここは生徒の出る幕では、ありませんッ」 「…あら、コルベール先生 先生こそ下がっていて下さいませんこと? 『火の本質は破壊ではない』んですものね? ですが私は微熱のキュルケ 荒事は好みですのよ」 「どうするつもりなのですか、そのような有様でッ」 「何を言っても遅いんですわよ先生 …だって、もう、来ますもの」 チッチッチッ 舌を鳴らしながらキュルケは 男に向かって左手の甲を突き出し、人差し指をクイックイッ 万国共通、キット通じる「かかってこい」だッ 右手は使えないから仕方なかった 変形させるフシギなチカラで骨が変な風にくっついたらしかった 「……」 しかし今度は男は来ない 戦闘態勢はとったままだが キュルケと回りを交互に見て動かない (…チョットぉッ) キュルケは苦々しげに舌打ちする (攻撃をためらうの? なんで今更ッ いいわよ、だったらもう一押しすればいいだけッ) 「…ファイヤッ」 ボワン 火×1 魔法の杖から放たれたそれは空高く舞い上がり 男の背中まで回り込んでから落着する まわりくどい軌道に魔力をとられて威力は落ち込んだが これでクラスメートを巻き込む問題なしッ 完全(パーフェクト)ッ!! 「さぁ…いらっしゃい、こっちにッ 今度はツルッパゲにしてやるわ」 ドワッ!! 男の足が、土から、離れたッ!! 4へ
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 康一は、一本の道を歩いていた。 隣では仗助くんと億泰くんがいて、一緒に馬鹿話をしている。 道の左手からは、露伴先生が現れて、一緒に取材に行こうとぼくを誘う。 康一どのー!という声が聴こえた。右手から玉美と間田さんが合流する。 やれやれだぜ・・・。という声が聴こえた。後ろでは承太郎さんがぼくたちを見守ってくれている。 由花子さんが道端に立ってぼくを待っていた。並んで歩く。 仲間達と共に歩く。 こうして歩いていれば、ひょっとしたら雨が降るかもしれない。小石に躓いて転んでしまうかも。 でもぼくには仲間がいる。寂しくなんかない。 この道は、杜王町へと続いている。 えーんえーん・・・ 康一はふとあたりを見回した。 子どもの泣き声が聴こえる気がするのだ。 康一は道をはずれ、その声の主を探しにいくことにした。 声を追い、藪を分け入って進むと、小さな池が現れた。 池の真ん中には小船が浮いていて、鳴き声はそこから聞こえてくるようだ。 子どもが池に一人取り残されて泣いているんだ。と康一は思った。 康一は池の中に踏み込んだ。そこまで深くはない。腰ほどの高さだ。 じゃぶじゃぶと水をかき分けて進む。 船にたどりつくと、ピンクブロンドの髪の女の子が毛布にくるまっていた。 女の子は小船の中で、独りぼっちで泣いていたのだ。 「もう大丈夫だからね。」 康一はその女の子を抱き上げた・・・。 康一は目を開いた。 知らない天井?いや、馴染みこそないが、ぼくはこの部屋を知っている。 コンコン、とノックがあり、扉が開いた。 目を向けると、黒髪でメイド姿の少女が現れた。 「コーイチさん。目が覚めたんですね!」 「し、シエスタ!?」 シエスタは胸に手をあて、大きく息を吐いた。 「よかった・・・。心配したんですよ・・・。あんなに大怪我して・・・!」 康一はようやく、自分が何をしていたかを思い出した。 「そっか・・・。ぼく、気を失っちゃってたんだ・・・」 「はい。三日三晩ずっと眠り続けてました。」 「そんなに!?」 徹夜でゲームをしてしまった翌日だって、そんなに眠ったことはない。 「頭を強く打ってましたから、そのまま起きないんじゃないかって心配しました・・・。」 康一はワルキューレに散々殴られたり蹴られたりした時のことを思い出した。 「他にも、両腕にはヒビが入ってましたし、歯も折れてました。肋骨は3本ほど折れて、一本は肺に突き刺さっていたそうです。」 「う、うわぁ。重症じゃないか・・・。」 康一は他人事のように答えた。自分の体を触ってみる。 「でも・・・あれ?その割には痛くないんだけど・・・。」 脇腹を触ってもうずく程度でそんなに痛くはない。腕にもあまり違和感はない。舌で口の中を確認したが、折れたはずの歯が元に戻っていた。 「ええ。コーイチさんをここに運び込んだミス・ヴァリエールが、先生に頼んで、水魔法の治療を施してくださったんです。」 シエスタは窓を開けた。 窓から日の光が差し込んできて、康一は目を細めた。 そして気づいた。 自分のベッドのうえにルイズが頭を乗せて眠っている。 ピンクブロンドの髪が太陽の光を反射してきらきらと光っている。 「ミス・ヴァリエールはこの三日間、ずっと学校にもいかず、ほとんど寝ないでコーイチさんの看病をしていたんですよ?」 「そうなの!?」 康一はルイズの寝顔を見つめた。 この我が侭娘が、そんなにぼくのことを心配してくれたのか・・・! 康一はルイズの頭を撫でた。 ルイズは、う~ん・・・とムズがっていたが、不意に目を開けると、がばっと起き上がった。 自分の頭に手を当てて顔を赤くする。 「ななな何してんのよ!!」 「いや、寝顔が可愛かったから・・・つい。ずっと看病してくれてたんだって?」 ルイズの顔が、ボッっと音を立てて真っ赤になった。 「ば、馬鹿じゃないの!犬のくせに・・・!自分の使い魔が怪我したら、面倒を見るのは当然でしょ!!」 そしてはっとした表情になった。 「そういえば、体は大丈夫なわけ・・・?」 心配そうに尋ねる。 「うん。もうなんともないよ!」と腕を振り上げて見せた。 実はその瞬間、脇腹にビキッっとした痛みが走ったが、辛うじて表情には出さずにすんだ。 「そう・・・よかったわ・・・。」 ルイズはほっと胸をなでおろした。 「あんまり無茶するんじゃないわよ。あんた、下手したら死んでたのよ?」 「ごめん・・・。」 康一は頭をかいた。 ルイズはそんな康一に一つ溜息をつくと、立ち上がる。 「じゃあ、どいて。」 「え?」 「わたし、あんたが寝てる間ほっとんど寝てないの。眠いの。」 「え、ご・・・ごめ・・・」 「だからほら!ベッドを空けなさいよ!」 ルイズは康一をベッドから引き摺り出すと、そこにするりと飛び込んだ。 毛布にもぞもぞと猫のように包まる。 そしてそのまま寝息を立て始めた。 「追い出されちゃったよ・・・。」 苦笑いするとシエスタと目があった。 ふふふっと笑いあう。 「それじゃあ、ちょっと厨房にいらっしゃいませんか?お腹が減ってるんじゃないかと思うんですけど。」 「そういわれると・・・」 代わりに康一のお腹がグルグルキューと返事をした。 「・・・減ってるみたい。」 「よかったぁ。」 シエスタは嬉しそうに手を合わせた。 「マルトーさんに、コーイチさんの目が覚めたら連れてくるようにって言われてたんです。」 シエスタは康一に、あの学生服を手渡した。 「寝ておられる間に、洗って修繕しておきましたから。」 康一にとっては、こちらで持っている唯一の服である。 「ありがとう!助かったよ!」 康一は、寝ている間に着せられていたのであろう、パジャマのような服を脱ぐと、いつもの学生服に着替えた。 そしてシエスタについて、厨房へと向かうことにした。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔